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中国国務院が進める店頭小売業界の構造改革とO2O戦略

中国国務院が進める店頭小売業界の構造改革とO2O戦略
1207億元という数字。

ダブル11は結果として、Tmallに途轍もない売上をもたらしました。昨年の912億元を優に超え、新記録を樹立。ついに中国EC業界は「1000億元時代」に入ったのです。これほどまでに優秀な成果をあげたことは、まさにECビジネスイノベーションの勝利と言えるでしょう。

そもそもダブル11の売上は、2009年の5000万元から2016年の1207億元まで、8年間で2400倍に膨れ上がりました。これは中国のリテール史上、類を見ない偉業ともいうべきものです。勝利する業界が出れば、必ずその裏には敗北する業界が出ます。EC業界が好調な一方で、中国では店頭販売による小売企業が苦戦を強いられているようです。

中国統計局のデータによると、2016年1月~9月の全国のネット小売の売上高は前年より26.1%増加。その一方で店頭小売業の前年比はわずかに7%増にとどまっています。うちスーパーは前年比0.2%増、百貨店に至っては2.1%の下落となりました。

店頭小売の売上高が下落してる原因は何なのか、それは明らかです。

  1. 経営コストの増加、特に賃料と人件費の上昇

  2. ビジネスモデルが古く、運営効率が悪い

  3. 市場の同質化で、イノベーションが不足している

  4. EC小売業界の急激な成長


近年、業績が落ち、コスト増加などの原因で閉店に追い込まれた店頭小売企業は少なくありません。楽購の上海中興店、百盛の北京太陽宮店、永旺の淄博張店、西区店はいずれもかつては賑わいを見せた大型店舗ですが、すべて今年の10月31日をもって営業終了となりました。北京華堂ショッピングモール十里堡店も11月1日に閉店。楽購、華堂などの小売企業にとって、これらは初めての閉店ではなく、過去3年間、北京華堂に至っては9店舗から2店舗にまで減少してしまったのです。

しかし、近年の店頭小売企業の閉店は、あくまで’’店頭小売業界内’’での競争による必然の敗北とも捉えることができます。というのも、現在中国のEC業界は小売業全体においてシェアは10%ほどでしかなく、残りの90%は今なお店頭小売業態にあるのです。店頭小売業は現在も間違いなく中国国内で圧倒的なシェアをとっています。

アリババの馬雲氏が言う「新小売」は店頭小売の救世主となるか?


中国EC業界のゴッドファーザーことアリババ馬雲氏は、常に「ECはオフラインの首を絞めるのではなく、オフラインと一緒に未来を歩んでいく」と述べています。そして今年、馬雲氏は新しい小売の概念として「新小売」を提唱しました。

「新小売」とは何なのか。馬雲氏は言います。「新小売」とは、オンライン、オフライン、物流、データ、テクノロジーの協業により生まれる全く新しい小売りモデルのことだと。これは既存都市と新しい都市商業地区、サプライチェーンとサプライヤーの変革に大きな影響を与えます。

馬雲氏はまた「ECばかりが急激に発展すれば、店頭小売りへの衝撃が大きくなります。これは誰もが望まないことです。90%シェアをもつ店頭小売業を徹底的に改革しこの新しいコンセプトを取り込んでいくことが大事です。」「我々は店頭小売業そしてメーカーと共に成長するほかに道はありません。メーカーが潤わない限り、小売が潤うことはないと確信しています。」「ECはオフラインの支え、オフラインの協業がなければ、長くは生き続けることは不可能でしょう。」と述べています。

中国国務院が店頭小売業をテコ入れする意見書を発表


11月1日、国務院が「店頭小売の革新・モデル転換の推進に関する意見」を発表しました。この意見書では、店頭小売企業は構造改革を加速させ、業界の枠を越えた業態融合を実現し、商品・サービスの供給能力と供給効率が持続的に向上させていくことを目指した計画となります。

意見書の要約は以下8つとなります。

①中核商業圏外への移動


業態が同じショッピングモール、百貨店、ホームセンター等は都市の中核商業圏外に出ることで、店頭小売機能だけでなく、社会的な生活体験の場、ファミリー消費の場、ファッション消費の場、文化消費の場として転換していく。

②商品開発の転換


ショッピングモール等では、これまでは小売企業がメインとなりテナント出店していたが、今後はメーカーと卸・小売等のバイヤーとが手を組み、新しいブランドを展開していくことを推進する。

③商業圏の移転


東部地区から中西部地区に移転させる。一二線都市から三四線都市へ。

④テナント料の値下げ


テナント又貸し・転売行為を減らし、中間手数料を減らす。また現在の商業施設を活かし、公有財産権店舗の転貸を減らすことで、店舗の賃料を合理的に下げていく。

⑤制限緩和


政府による店舗等のの内装制限を緩和し、不要な行政手続きを減らす。

⑥オンライン・オフラインの税収環境の公平性


オンライン業界とオフライン業界の税収環境を公平にしていく。

⑦O2Oのさらなる融合による導線開発


O2Oのさらなる融合を促進し、新しい消費スタイルを促進することで消費者導線の開発をしていくことを推進する。

⑧15分圏内の商業圏構築


15分圏内の商業圏構築に力を入れる。

これは店頭小売業界にとって新しい発展モデルとなり得ます。馬雲氏は「今後10~20年の最大のチャンスとチャレンジは、オンラインとオフライン、店頭とインターネットの完全な融合にしか未来はない」と述べています。

現在、店頭小売の問題は効率低下だけではなく、業態そのものにイノベーションがありません。今回の国務院による意見書は店頭小売業の発展を方向付けることになるでしょう。オンラインとオフラインの強みが共に活かされるO2O戦略により、小売業界はますます強固なものとなり「流通革命」へと発展していくことが期待されます。

 

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