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Wechatが中国EC業界を揺るがす新たな検索機能をテスト中。実装秒読み段階へ

Wechatが中国EC業界を揺るがす新たな検索機能をテスト中。実装秒読み段階へ
近年、テンセント社はWechatの検索機能の強化に力を入れています。今年5月にテスト的に導入された検索機能は「検索する」メニューにおいて、公式アカウント、WeChat Mini Apps(微信小程序)、そしてモーメンツ内にあるコンテンツが検索できるようになりました。この機能はデフォルトでアプリ内に存在するわけではなく、ユーザーが自ら設定し表示させることで使うことができます。

Wechatの新たな検索機能とは?


そして今回、さらなる検索機能の充実が図られているとの情報があります。その検索対象はなんとWechat内で販売されている商品です。Wechat内で企業が販売する商品が検索可能になるとのことで、現在クローズドでテスト実装が行われているようです。

Wechat内ではこれまで特定の商品を検索することは出来ませんでした。しかし現在、テンセント社はそのテスト実装に参加するEC企業を募り、商品検索機能の検証を進めています。関係者によるとWechatがこの商品検索機能を実装することは、ほぼ決まっているとのこと。ユーザーは先述の「検索する」メニューにおいて、商品に関するキーワードを入力します。すると検索結果にWeChat Mini Apps(微信小程序)で販売されている商品がヒットしてくるのです。
具体的な話をします。現在の検索機能では、例えば「口紅」や「果物」と検索すると、検索結果一覧には、まずそれぞれに関連する広告が表示され、その下にモーメンツや公式アカウントのコンテンツが出てきます。ここに商品検索機能が実装されるようになれば、検索結果として商品も出てくるというのです。

Wechat、検索結果

商品検索がもたらすEC大変革


ところで、商品検索のエピソードと言えば、2008年タオバオに出品されている商品がBaiduでヒットしなくなったことが、後の中国EC業界で大きな変革となりました。これにより、Baiduに流れていた広告収入が一気にタオバオに渡るようになりました。よく似た状況が現在のタオバオとWechatの関係でも起こっています。Wechatではタオバオへのリンクが飛ぶことはありません。Wechatユーザーはタオバオ関連のリンクをWechat上で発見しても、クリックして直接タオバオに飛ぶことができないのです。多くのユーザーはコピーアンドペーストでタオバオを閲覧しているようです。

このような状況下でさらにWechat自身に商品検索機能が実装されることは、既存のECプラットフォーム企業にとって相当な脅威となることでしょう。もろに影響を受けるのはおそらくタオバオやTmall、京東など大手プラットフォームです。

Wechatを活用して商品販売をする企業の多くはWeChat Mini Apps(微信小程序)を使い、自社商品を紹介しています。今回の商品検索機能の対象はまさにこのWeChat Mini Apps(微信小程序)内にある商品がメインとなります。ネット通販業界でPCが主流だった時代にタオバオなどのECモールでのみ行われてきた行為が、モバイル時代の今日、Wechatという巨大プラットフォームで可能となるのです。

Wechatで全てが完結する新しい消費生態系


これまでのWechatの検索機能との相乗効果も期待できます。まず、ユーザーは検索することでモーメンツから他のユーザーの消費体験情報を得ることができます。「この商品を使ってみて良かった」「このサービスは自分にあっていた」など、口コミを確認することが簡単にできます。そして、ユーザーはまた検索することで、WeChat Mini Apps(微信小程序)からさまざまなインターネットサービスにたどりつき利用することができます。例えば位置情報サービスやクーポン発行などのミニアプリです。さらにWechat内にある商品も横断的に検索できるようになれば、ここで大きな商圏が生まれ、それぞれのユーザーの消費活動が完結できるようになるわけです。テンセント社はこのような独自の検索環境を進化させることで、消費に関わる情報獲得から購買、さらなる口コミ、そしてO2Oまで、すべてがWechatで完結してしまう生態系を築こうということなのです。

中央集権型 VS 分散型


タオバオは今日では伝統的なECサイトと呼ばれるほど、従来のPC主流時代にEC業界を牽引してきた存在です。特に検索という側面から見た場合に、検索行為から得られる情報はユーザーにとって中央集権的なものばかりでした。プラットフォーム側(出店企業)が発信した情報のみが検索結果としてヒットする仕組みでした。しかしながら、Wechatで得られる情報は分散型的と言えます。必ずしも企業から一方的に発信された情報だけがヒットするのではなく、いち消費ユーザーが発信した情報が商品情報と並列でヒットしてきます。口コミ情報と公式商品情報が並列になるのです。そうなると、中小企業にとってはチャンスです。どれだけ良いことを商品情報として流しても口コミ情報が最悪であればその商品は結果的に買われません。巨額の広告予算が勝敗をわけるという風には行かなくなるわけです。金銭的な体力勝負の時代から、より消費者に実際的に評価された商品やそれを販売する企業が勝つという時代になってきます。

既に9億のユーザーをかかえるWechatでの大変革。モーメンツ上の商品の口コミ、企業の公式アカウントなど、これまで商品のセールスには直接的につながることのなかった検索結果のみがユーザーに届けられてきましたが、今後は商品そのものが検索結果として届けられます。Wechatに眠る巨大な需要が一気に出現してくることが期待できます。

 

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