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RED(小紅書)とTikTok(抖音) のO2O戦略

RED(小紅書)とTikTok(抖音) のO2O戦略

中国版インスタグラムとして親しまれ、自身を「仮想都市」と称しているプラットフォームRED(小紅書)、既に1億人を超える若いユーザーを抱えています。

この注目を集めるREDが、ブランドショップを巻き込んだEC領域に進出するだけでなく、オフライン店舗の領域までをカバーしようとしているのです。

REDは店舗の詳細画面を掲載する機能を追加し、ユーザーは投稿の中に貼ってある場所のリンクをクリックするだけで、店舗詳細画面へ遷移できるようになりました。


O2O店舗詳細画面へ遷移


RED(小紅書)の店舗送客


先月REDはブランドショップにマーケティング機能を追加、商業プラットフォームへの重要な一歩を踏み出しました。

REDがEC機能を追加したことで、オフライン店舗への機能追加により注力するのではないかと期待が集まっています。

REDにはすでに多くのオフラインコンテンツがあります。オフラインの店舗や場所などの投稿、チェックイン機能、旅行地のおすすめなど、「付近検索」を基にしたおすすめコンテンツを探せる機能はすでに豊富なのです。


近くの店


実際の画面でも、「付近」のセクションには、近くのレストラン、近くのスポット、ホテルなどテーマに分かれてたくさんの情報が見られるようになっています。

近くの店舗のページには、簡単な店舗紹介や場所の他にも、関連したコメントや写真、「Check-In」「旅行記録」「体験記録」など写真をとってシェアする機能をもった仕掛け(ボタン)が設置されています。


旅行記録


例えば、ユーザーが「大悦城(中国のデパート)」と検索すると、多くの都市での「大悦城」の検索結果が出るとともに、ユーザーは自分の場所から近い「大悦城」の詳細情報を見ることができます。

直接検索の他にも、ハッシュタグ検索も盛ん。場所のタグをつけていないポストもたくさんありますが、投稿者はコメント上に具体的な場所の住所や攻略方法、各種店舗の詳細な紹介やコメントなども参考にできるようになっています。これは、RED の注力ポイントが、従来の「家まで」(外出中)から「お店まで」(送客)に変化していることが言えます。


送客機能


TikTok(抖音)の送客機能


REDと比べて、日本でも昨年から話題になってきたプラットフォームがあります。

それこそが、抖音(中国語名)ことTikTokです。

日本のTikTokより少々進んでいるのは、新しいマーケティング機能である「抖店」(TikTok Shop)を試作運転し始めています。

抖店とは、ローカル店舗のマーケティングツールの一種で、現地の潜在顧客への宣伝や、そのエリアの人気ランキング機能など、ブランド店舗がローカルビジネスを展開するのに役立つものとして使われていました。


例えば、ユーザーがブランドの関連動画を見ているとき、そのブランドの専門ページへ遷移し、名前や場所、商品の情報などを見られるようになったのです。

これにより、TikTokはただオンラインユーザーを集めるだけでなく、彼らをオフラインに誘導し、各ブランドがオフライン店舗でのユーザー消費にコンバージョンできるようにしました。


「抖店」(TikTok Shop)


TikTokに比べ、REDの店舗詳細ページの中ではまだ商品の具体的な紹介や、直接購入へ転化させる仕組みはなく、関連するポストや写真などが集まっているだけです。

少数ではありますが、詳細ページの中に人気オススメ商品や、一人当たり予算などの追加情報を載っける店舗も増えてきたところです。


O2O(Online To Offline)


中国が推進する「ニューリテール」時代の中で、オフライン店舗の重要性が業界の注目を集めています。

アリババやテンセントは言うまでもなく、ブランドやスーパーなどオフラインのリテール店舗の体験を変革していることはよく知られています。

AI 試着鏡、顔決済、VR/AR ゲームなどの新技術が次々と現れる中、店舗体験がますます重視されているのです。


ニューリテール


同時に、デジタル化やオムニチャネルでのブランド展開が進む中、オンラインかオフラインどちらで購入するかはすでに重要ではなくなってきています。

更に言うと、オンラインプラットフォームがオフライン店舗への導線という考え方も、新しいものではありません。


アリババが昨年発表したTmall Cloud Store(天猫云店)は、中国の大手ブランドが数多く導入し、その機能のことを「オフライン店舗への送客と、消費者の店舗外での購入を促進する」と称しています。

ユーザーがクラウド上で店員と交流できる場を提供し買い物のアドバイスをもらえるサービスや、店舗での優待券などにより、店舗への導線を敷いているのです。


コンテンツプラットフォームとオフライン消費


Tmall と異なり、REDやTikTokは本質的にコンテンツプラットフォームであるため、コマース性はそこまで強くなく、ユーザーも大多数が買い物を目的にしておりません。

そのため、オフライン店舗は、Tmall Cloud Storeのように直接的なマーケティング手段でユーザーをかきこむわけにはいかず、より慎重に良質なコンテンツを作ることで「タネを蒔く」しかありません。


あるリテール業従業者は「オフライン店舗は、REDやTikTokなどのコンテンツプラットフォームでマーケティングをする際、必ずターゲット層が適切かどうか、そしてコンテンツによって直接顧客をお店に誘導できるかを見極めなければならない。なぜなら、この手段は、単純なオンライン上でのマーケティングよりもコンバージョンが難しいからだ。」と言います。


この点において、現段階ではREDとTikTokなどのプラットフォームは、まだ工夫の必要があります。

確かにこれらのサービスがもたらした影響は大きいですが、実際の使い道や効果はまだ明白ではなく、ブランドやリテーラー側は大規模の予算投入に踏み切れずにいます。

ブランド側としては、「パブリックな」プラットフォーム上のユーザーを、少しでも多く「プライベート」な自分のページへ連れて来たいと考えていますが、この導線を引ける仕組みが不十分だと、コマース化は難しくなります。


オフラインの場面では、客層が若いインフルエンサーや、トレンドショップなどはREDなどプラットフォームでのユーザーの投稿画像を基にして、コンテンツ発信による集客に適しており、ターゲティング以外にもこれらの店舗の方がより集客力のあるコンテンツ作成に向いています。


「プラットフォームはどこも初期は戦略としてユーザー獲得を掲げます。そしてユーザーが集まり発展していくにつれ様々な施策が打てるようになるのですが、ある程度まで成熟するとユーザー数によるボーナスがなくなり、価値自体もすり減っていきます。そのため、多くのブランドショップはまさに現在急速に成長中でユーザーボーナスのあるREDやTikTokなどのプラットフォームをどうにか利用したく、まだ方法論は未成熟ですが、とりあえず先に試してみようとしているのです。」あるブランドのマーケット部責任者は述べます。


さらには、それらのプラットフォームで消費者を囲い込むのは現状難しいが、消費者が店舗に来てそのタネを蒔くのを促すことはでき、それは結局売り手に相応のマーケティング意識があるかどうかにかかってくる、と指摘しています。

REDではまだオフライン店舗に多くの機能を公開できておらず、売り手はREDの運営に本腰を入れられていないので、やはり現状は投稿コンテンツから集客をする必要があります。

しかしこの状況では、どの売り手も良質なコンテンツ作成に乗り出し、その制作コストが高まっていくことが懸念されています。


コンテンツEC からコンテンツビジネスエコシステムへ


大衆点評 vs 小紅書


コンテンツでタネをまき、オフラインへ誘導するというこの仕組みは、実は先駆者がすでにいました。

日本インバウンド業界で、訪日中国観光客の集客するに使われている大衆点評です。

ここ2年ほどオフラインに根を張っていた大衆点評は検索ツールとしての存在を弱め、コンテンツやコミュニティという属性の強化を企んでいました。


大衆点評


そして昨年7月、大众点评はREDとコンテンツの著作権問題で対立したのです。

REDはWeiboにて大众点评がREDのコンテンツを盗用した疑いをかけ、直ちに該当部分とアカウントの削除を要求しました。


RED VS 大衆点評


その後同じくWeibo上で謝罪をし、「新業務の管理不備から違法転載を招いてしまい、今後はITによって同様の問題が二度と起きない仕組みをつくる」と表明しました。


こうした騒動の背景には、明らかに大众点评のコンテンツやコミュニティに対する野心がみて取れます。

REDと比べて大众点评は消費者の利用目的が強い一方、PGC(Professionally Generated Contents)に乏しく、利用店舗での評論をメインに使われています。


REDの今後の方向性


REDのデータが集まるに連れ、将来はユーザーの場所を基にしたおすすめ機能がより精度の高いものになると期待される一方、RED は根底にある構造としてPOI(Point of interest)のロジックではなく、コンテンツやタグを元にしたロジックで作られているため、それはそれで難しい挑戦になるという厳しい意見もあります。


REDはオフライン取引の属性をまだ十分に確立できてなく、取引プロセス自体も複雑であるため、思い切ってオフライン取引のフィールドに深く介入することは難しいと思われます。

しかし、REDがオフライン店舗に誘導している方向性は正しく示しており、現状ではコンテンツやコミュニティによる広告機能にのみ留まっているのです。

もしマーケティングとしてユーザー囲い込みなどができるようになれば、REDは力をさらに発揮する余地があるのではないでしょうか。

REDは従来コンテンツによるEC確立を図っていましたが、今後未来は「コンテンツビジネスエコシステム」の建設を目指しているのです。


日本のプレヤーにとって今までアウトバウンドとして使ってきたプラットフォームですが、

新たな動きから見ると、今後インバウンド業界でも活用される日が来るかもしれません!


より詳しい情報が必要な方、Red(小紅書)関連サービスよりお問い合わせください。

 

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