世界中で流行している新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光は厳しい状況が続いています。しかし、観光庁はコロナ収束後を見据え、2021年度の観光予算は408億円、そのうち208億2100万円を受入環境整備や訪日外国人の段階的な復活に向けた取組に予算をつけています。
また、日本政府は最初に動き出すのは「富裕層」であるとし、「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」を設置、富裕層誘致を強化する方針を打ち出しました。観光業界はこの世界の富裕層とどう向き合っていくかが、国際競争を勝ち抜いていく上で最も重要だと考えています。
この富裕層を取り込む際に考えておくべき、について考えて行きたいと思います。
国の文化の違いとCSR活動に与える影響について
世界の旅行者が観光地を選ぶ際に社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)を果たしている都市やホテルに関心をしめしている傾向があります。世界のCSR活動を比較してみると、国によって取組みの積極性には大きな違いが見受けられ、認識の違いが国際競争において大きな差が生じてくると予測されます。
日本でも経済活動のグローバル化、インターネットの普及による情報発信の変化、社会情勢の多様化や企業の不祥事を背景に、社会的責任(CSR)に対する関心が高まっています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で疲弊した旅行業界においても、「SDGs」のような持続可能な観光を継続していくため、制度を根本から見直し、「旅行者」「事業者」「地域」のみんな豊かになれる「三方よし」の施策を実施していくことが求められます。
社会的責任を果たす役割では、日本は発展途上である.
世界のCSR活動を比較して見ると、依然としてその取り組みの積極さには大きな違いが明らかになっています。欧州連合では20年ほど前から環境政策の原則「予防原則」を採択するなどCSR活動を積極的に取入れてきた背景もありスコアの高さが目立っています。しかし、CSRの活動は国によって政治志向や宗教などによりに大きな差が生まれ、宗教を信仰する国は無宗教の国よりも、CSR活動が積極的であるとも言われています。
近年、日本でも文化指標といわれる、権力格差や個人主義-集団主義、男らしさ-女らしさといったジェンダギャップの問題で、政治や企業の中で問題となっていることから、CSR活動を積極的に取り入れることが、国際的な観点からも大切ということが伺えます。
国際的な社会的責任のギャップを埋めることで、富裕層から観光客を呼び込む
観光以外の分野でもグローバル化に伴い、人種差別や性別によるジェンダーギャップなど 社会に与える影響に対する注目が高まっていきました。それに対し、企業には自主的・主体 的に社会に与える影響を管理し、社会的コストをCSRに関する活動を通じて応分負担し、その結果について説明責任を果たすことが求められるようにりました。
地域や企業が自主的・主体的に管理する取り組みが広がる中で、CSRの活動を評価しようとする流れがステークホルダーにも見られるようになり、同時にSDGsの観点から社会課題が企業のオペレーションや競争力に及ぼす影響への注目が高まっていきました。これにより、欧米の企業や観光施設でも、社会課題を新たなビジネス機会と捉える考え方か世界中で広まっています。
これからの富裕層が求める価値とは、企業のあり方と同様に「財務」「ESG(環境・社会・組織)」「インパクト」の 3 つの観点から評価され、特に右脳で考える「インパクト」が最も重要だと考えます。
ひと昔前の観光地ではホテルや施設の設備が整っているかなど、設備投資に注目が集まり観光地や宿泊施設の財務に注目が集まっていました。次に旅行が手軽にできる環境へと変化していく中で、社会福祉としても注目が集まり、社員旅行や慰安旅行なども増えて行きました。そして、個人でも手軽に旅行できる環境になっていくにつれて、求められる旅のスタイルが多様化していき、インパクトを与える取組を取り入れ価値を創造していくことが求められています。
観光地や施設、企業が創出する「社会の価値」の関係を考える
「社会の価値」の創造が「企業の価値」として認識されきちんと評価されるかどうかは、対象となる社会課題に対する社会の認識によって大きく異なります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で社会課題がもたらす企業との関係性は、タイミングなどの条件によって捉え方が変化します。例えば気候変動の問題は、世界中で広く社会全体で企業の財務面に影響を与える課題としての共通認識が構築されていたり、地域や企業が気候変動の問題に対応し温室効果ガスの排出を削減したことは、「企業の価値」の範囲として認識されるように変化しています。
上記のグラフは、それぞれ株主・投資家にとっての「企業の価値」と、その他のステークホルダーにとっての「企業の価値」の大きさを表しています。社会課題の解決に向けて、企業による「社会の価値」の創出を企業が推進する際には、双方にとって価値の大きい「共通価値」の領域として、AやBの 領域を共通価値に高めていくことが必要であり、観光においては地域や施設、企業の側と旅行者や顧客の双方に共通価値の領域を広げていくための努力が求められています。
具体的にCSR活動はどのようにしていけばいいのか?
海外から旅先を選ぶ選定基準として、「自然」「文化」「景観」などの観光コンテンツと合わせて、施設や食の充実度が求められていました。また、コロナにおける感染防止対策など明記することと同時に、CSR活動も旅先を選ぶ基準として重要視されています。
ホテルオークラのホームページを参考にしてみると、社会貢献は地方のホテルや民宿をみると、CSRの取組が掲載されているホームページは多言語サイトを取り入れているホテルでもほとんどみられませんでした。
これからは必須項目になるといっても過言ではありません。
他にもCSR活動はいろいろ
直感などの右脳で直感的な思考で行動する原理が働く要素として、CSR活動は有効に働きます。富裕層は施設や企業がどこにお金を掛けているか、思考の中核を分析し原動力に働きかけることで、物事を判断する傾向があります。共通の価値を提示するとで好意を抱いてくれる可能性が広がります。
例えば、同じ価格のカフェ店で提供されるコーヒでも、「高級な焙煎機を使用したお店」と、「非営利団体からフェアトレードで仕入れたお店」で比較した場合、富裕層はどんな価値感を抱いているのかを考える必要があります。求める顧客ターゲットが地域貢献、社会貢献に強く反応する人達なら、迷わず後者を選ぶと思います。世界で広がっているSDGsなどの観点からも、これからの時代に求められる告知をしなければなりません。
富裕層が求める視点が、これからの基準になる
観光におけるミッション・ステートメントとして世界全体が抱える課題を解決するといった取組が求められています。従来の「社訓・社是」や「経営理念」にあたる、企業・従業員が共有する価値観・社会的使命であるミッションを、実際の行動指針や方針として、具体化することがCSR活動として活用していかなければなりません。
右脳を刺激する取組として、社会貢献や環境問題に取組んでいる姿勢を可視化し、地域や企業イメージを良い印象にすることが、新しい観光で必要になります。
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