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テンセントのリテールEC戦略

テンセントのリテールEC戦略
毎年テンセントが年始の1月頭に行なっている。ここでは新年の抱負のような形でテンセントがその年に注力する分野や方針を発表されるため、大変多くの注目が集まります。そして2020年、彼らが発表したのは「帮助商家打造属于自己的商业闭环」というポイントでした。直訳が大変難しいので私の理解で表現すると、「商売人に対するワンストップ型のビジネス支援」とでも表せましょうか。つまり、テンセントのサービスの中で、出店者のビジネスが完結できるようなサポートを強化する、という宣言を行いました。具体的な方法として掲げられたのが3点

1.新規顧客の自然流入(顧客獲得)
2.長期的な顧客リテンション
3.より便宜的な商売ツール

まず、最初の「顧客獲得」では、主に検索エンジンの良化が焦点に当てられました。今まではWeChatでの検索は主にトーク内容や友人検索などに終始しており、情報検索ソースとしてはあまり機能していない状態がありました。彼らはこの検索ソースにミニプログラム(小程序)の内部コンテンツまで含める方針を打ち出し、「搜一搜」(コンテンツ検索機能)のリッチ化を目指します。これにより、WeChat上の情報に対してより多くの送客導線が設けられ、拡散性が高まることによって、自然に新しい顧客が情報を得に来る状態を実現できます。

2つ目の顧客リテンションに関しては、「顧客への通知方法の改善」とでも表せます。現状、無限にある公式アカウントやミニプログラムに対し、ユーザーは自分の好みに合わせてフォローし、情報を定期的に獲得します。新しい投稿が出た時、新しいキャンペーンなどが始まった時、往々にして使われる手段がプッシュ通知などの通知機能です。この通知機能は、一面だけ見ると新しい情報を知らせてくれる便利な機能、という見方もありますが、正直来すぎると鬱陶しいと思われ、通知をOFFにするユーザーも多発します。テンセントはこれによる顧客離脱を危惧し、顧客の状態・好み・熱量に合わせて通知の送り方を変え、より長期的に購読してくれる仕組みを開発します。

3つ目の「便利ツール」は、主にECにフォーカスした機能開発です。テンセントプラットフォームでのECは、これまで偽物かどうかの判断が付かない、配達が時間通りではない、注文がしづらい、買った後の保障がない、などの課題がユーザーから出ていました。これに対し、ブランド認証やロジテック(ロジスティックスの開発)、保障システムの整備などを注力することを発表しました。

特に、ミニプログラムを使ったEC支援は力を入れている分野で、ミニプログラムはローンチ後3年が経ち、DAUは3億越え、累計8000億元もの取引額で、年間成長率は160%と、驚異的な数値が並ぶサービスに成長しています。ECに適切なサービスとして、売り手に対しても注文管理システムなどを搭載し、マーケティングから発送までをワンストップで行うことが可能になってきています。こちらのマーケティング手段は、「WeChat上の広告」と、今年搭載予定の「ライブ配信」です。こちらについてもより詳細にご説明いたします。

WeChat広告の基礎



WeChat広告は、
1.朋友圈广告(モーメンツ広告)
2.公众号广告(公式アカウント広告)
3.小程序广告(ミニプログラム広告)
の3種類があり、スケジュール型、クリック入札型、露出量入札型など幅広いメニューがあります。

Wechat広告種類

モーメンツ広告は、友達の投稿が並ぶタイムライン上に、同様の形式で広告を掲載できます。ブランド、店舗の宣伝からクーポン配布まで幅広く利用用途があります。
公式アカウント広告は、50,000人以上のフォロワーを持つ企業等のアカウントの記事投稿の底部や中部に、埋め込み型のバナー広告を掲載できるサービスです。こちらは動画広告も配信可能な万能型になります。
最後のミニプログラム広告は、各ミニプログラム上部にトップバナーを出せるサービスです。広告を踏むと違うミニプログラムが開くものもあり、ターゲットに合わせた出稿も可能です。

これら広告メニューは、日本でいうLINE広告のように、人口のほとんどが毎日のように使うサービスプラットフォーム上に出せる広告として、多くにニーズを創出しています。基本的な使われ方としては、自社のHPや商品ページなどのリンクを貼り、そちらに飛ばすような形で送客が行われていますが、上記で述べた「ワンストップ型の商売支援」という観点で新しく導入されるのが「ライブ配信広告」になります。

WeChatのライブ配信広告



このライブ配信広告は、各ブランドや店舗が持つミニプログラム上で使えるものです。

WeChatのライブ配信広告

ミニプログラム上で、ユーザーが配信ルームをタップすると、ウェブビューとしてHTML5型の配信ルームが立ち上がり、配信ルーム上で商品タブをクリックすると、元のミニプログラムの商品ページに遷移し、そのまま購買ができるような設計になっています。もともとライブ配信機能がない場合は、ミニプログラム上の商品カタログから、直接購買ページに飛ばされていました。ここにライブ配信が挟まることによって、商品のクリック率やコンバージョン率を高める効果が期待されています。

また、こちらのミニプログラムまでの導線を上述したWeChat広告から設計することも可能で、このようにWeChat上でユーザーを回遊させながら買い物をさせる構想こそが、2020年にテンセントが注力する分野なのです。
3年前にミニプログラムのサービスが始まった頃、多くの人はアプリを潰しにきていると恐怖を抱きました。しかし、今振り返ってみると、ミニプログラムはあくまでもWeChatのエコシステムを補完する役割であり、広告など、プラットフォームの特性と組み合わせることによって、アプリ以上に効果を発揮できる存在へと成長しています。日本でも多くのリテールブランドや店舗などがこぞってアプリ開発をし、会員アプリを通じて顧客とのリレーション維持やオンラインショップへの送客を行なっています。中国ではそれがほぼ全てミニプログラムに代替されており、送客だけでなく購買までをWeChat上で済ませることができるようになっています。

ECブランドの驚異のWeChat活用術



このような利便性の高いミニプログラム上でのECでは、驚くような成果をあげるブランドも出てきています。武漢ウイルスにより人々が家にこもって身を守る今年2月上旬、6日間だけでミニプログラム上で2800万元もの取引額を生み出したブランドがありました。その会社はヨーロッパ発のBestsellerグループ(綾致集団)です。2018年3月からミニプログラムを運用開始、店舗での顧客をミニプログラム上へ流すことで、そこでも継続的なコアファンになってもらうような運用をしていました。店舗に来たお客様に対し、店頭の販売員が接客、お店にない場合はWeChatを交換し、かつミニプログラムから購入してもらう、という方法をとっていたところ、販売員のWeChatには多くの顧客データが溜まっていきました。彼らは日常的に自分のモーメンツにて商品やセールの紹介をし、ミニプログラムに流す又は来店してもらうことで、自発的に顧客リレーション維持やプロモーションを行っていました。実際、ミニプログラム購買のうち、60%は販売員のモーメンツからの来客というデータがあるほど、この運用は功を奏していました。

Wechat機能

この運用体制が火を吹き始めたきっかけが、武漢ウイルスです。販売員は店頭に出勤することができなくなり、お客さんも家の中に籠もりっぱなしになってしまったため、もちろんブランドからすると大きな打撃を食らう恐れがありました。そこで、綾致がとった手段は、「セールス上位40%n販売員たちにミニプログラムでの売上の10%をインセンティブとして付与する」ということでした。これにより販売員たちは自発的に方法を考え始め、個々が抱える顧客をグループチャットに入れ直接営業をかけたり、より一層モーメンツ投稿を行ったりと、思い思いの営業を始めました。この結果、2/1-2/6のたった6日間で合計2800万元もの取引が行われるという記録を残しました。

この例はテンセントが描くWeChatのリテールEC戦略の典型的なペルソナと言えるでしょう。顧客の獲得から購買までをWeChat上でワンストップで実現する。現状すでに完成されたようなエコシステムになっていますが、これにライブ配信機能が加わることで、より一層ブランド側の活用が進むことかと考えられます。WeChatでのプロモーション戦略や広告のご相談は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。

 

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